類書に触れてみよう―古今図書集成と古事類苑―

最終更新日 2019/06/16

こんにちは!のぐち(@drtwitting1)です☆

 

2019年5月1日に改元が行われましたね。だいぶ新元号「令和」にも慣れてきたかと思います。病院のカルテシステムには未対応のものもあるようで平成31年表記の処方箋もまだお見かけします。

元号が発表されたとき専門家たちの間で『古事類苑』「類書」が参照されました。また元号考案の過程でも学者たちは「類書」を調べたかもしれません。

 

類書とはなにか?

「類書」とは聞き慣れない言葉ですが辞書には以下のようにあります(川瀬一馬『日本書誌学用語辞典』*1)。

①同類の書物。
②語句や故事などを類聚して編纂した一種の百科事彙。
 おもに中国や日本で編纂されたものを「類書」と呼びますが、欧州で編纂された百科事典を「類書」と呼ぶことはないように思います。
日本書誌学用語辞典 (1982年)

日本書誌学用語辞典 (1982年)

 

 今回は中国清代を代表する類書である『古今図書集成』と日本最大にして唯一の官撰類書である『古事類苑』を採りあげます。

 

 古今図書集成

 中国史上最大の類書です。清の康煕帝の命により編纂が開始され、1725年に完成しました。
東呉大学と台湾故宮博物院による『古今図書集成』データベースです。ページを移動したときに文字化けしたらエンコード繁体字中国語にしてみてください。
 

古事類苑

明治政府により編纂が始められた本朝最大にして唯一の官撰類書。

古事類苑全文データベース国際日本文化研究センター

古事類苑データベース国文学研究資料館):全文が検索対象ではないみたいだけど見やすい。

具体例

 新元号「令和」を古事類苑全文データベース国際日本文化研究センター)でけんさくしてみましょう。

多くの方が指摘されていたとおり『奇魂(くしみたま)』*2の文章が出てきました。

『奇魂』一 医薬名義〈并医薬変化附本道弁〉
病を癒す動植を くすりと云、原義は 令和( なぐし) の意也、基は神を和( なご) し、人を和( なご) め、風の 和( なぎ) 、波の 和( なぎ) などの和にて、基詞の活用は、自のかたは、ながん、なぎ、なぐ、なげにて、体言になればなぎなり、物を然するかたは 和( なぐ) さん、なぐし、なぐす、なぐせにて、体言になれば、なぐし也、名越祓と云も〈こ、く、音通、〉神を和し奉る也、〈夏を越と云は俗説なり〉
一般的には「くすり」の語源は奇(く)すしき力を発揮することから,くすりというようになったというものですが、佐藤鶴城の説では異なるようです。
なんと「くすり」とは「なぐし(令和)」が原義であり、風や波の「なぎ」に通じることばだろうという説なのです。
こじつけになりますが、令和という時代は病を「和せしむ(令和)」くすりを司る薬剤師の時代なのかもしれません。
 

*1:川瀬一馬『日本書誌学用語辞典』雄松堂出版、東京、1982

*2:佐藤鶴城の著。佐藤鶴城は水戸藩の医師で和方医学(漢方の流派である古方や後世方に対しての言葉)に関する書籍が多いとのこと。