涙ひまなし 新型コロナワクチン

本日、新型コロナワクチンの1回目の接種を終えました。薬局勤務で医療従事者扱いということで先行接種を受けさせていただきました。

 

病院や介護施設ほどには新型コロナウイルス感染症に気を遣わないように思われますが、私もお宅を訪問して医薬品を整理したりして結構長時間滞在したりすることがあり、感染症対策には気を遣っております。ひとまずワクチンを接種できたということで、双方にとって少し安心感がありますので、とてもありがたいです。まだ接種できていない医療従事者も多く、申し訳ない気持ちもありますが…

 

わたしは現在、母と2人で暮らしております。母も一応ぎりぎり高齢者なので早く接種できればよいなと思っていますが、母は私がひとまず1回接種できて非常に安心しておりました。父母の愛とは誠に深くありがたいものだと改めて実感しました。

 

仏教の経典『法華経』には七つの比喩(法華七喩)がありますが、その中に如来寿量品の良医病子というお話があります。それは次のような話です。

 

昔、百人余りの子供がいる腕の立つ良医がおりました。しかしある時、良医の留守中に子供たちが毒薬を飲んでしまい、良医が帰ると子どもたちは苦しんでいました。良医は良く効く味も香りもよい薬を調合して子供たちに与えました。半数の子供たちは毒気が軽く正気だったので、父親の薬を素直に飲んで本心を取り戻しました。しかし残りの子供たちは正気を失っており、飲もうとしませんでした。そこで良医は方便を設け、いったん他国へ行き、父親が出先で死んだと使者に告げさせました。父の死を聞いた子供たちは嘆き悲しみ、正気を取り戻して、父親が残した良薬を飲んで病は治りました。

 

父母の愛というのはありがたいもので、たとえ自分が死んだと方便を用いても(あるいは実際に自分が死ぬのとひきかえにしても)、子に良薬を飲ませたいと思うものであります。新型コロナワクチンもまた良薬であり、自分がリスクの高い高齢者であっても、まず自分の息子に接種してもらいたいと思うものであります。そのことを思うと涙ひまなしなのであります。

 

薬剤師として薬を触ることに関しては日常すぎて、なんら感慨もないことが多いです。しかし良薬を子に与えたいという父母の恩が、また様々な人の思いが新型コロナワクチンには込められているということを実感しました。