健康サポート薬局研修を受けて

今年(2018)の6月から健康サポート薬局の研修を開始し、ようやく12月の後半に全研修を修了したのぐち(@drtwitting1)です☆ 合計30時間の研修ということでそれなりに面倒な研修ですが、内容はなかなか良かったなあと思い、振り返って復習してみたいと思います。

 

健康サポート薬局をめぐる現状

一般市民の92%は健康サポート薬局を知らない」という日経DIの記事がありましたね。

日本薬剤師会が民間のインターネット調査会社に委託した調査結果(2018年11月29日付)では、全国の20~79歳の男女1000人への調査で「健康サポート薬局を知っていますか」と尋ねたところ、「知っている」は8.4%、「知らない」は91.6%だったというものです。ただ健康サポート薬局への期待は高く、健康サポート薬局を使いたいと思うかを聞いたところ、「そう思う」は51.3%と半数以上を占めたとのことです。

しかし2018年11月30日時点での健康サポート薬局の届出数は、全国で1184軒にとどまっているとのことで、2年経過してまだ体制が整っていないようです。もっと多くの薬局が参加すること、健康サポート薬局がどこにあるのかわかりやすくするなどの課題がありそうですね。薬剤師会でもマークを作ろうとかいう動きはあるみたいですが。

日経DI 2018.12号の健康サポート薬局特集もこの記事と同じ富田文氏が担当されているのでみなさんもぜひご覧になってほしいです。

 

そもそも健康サポート薬局って何?

健康サポート薬局とは「かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、国民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する(健康サポート)機能を備えた薬局」と規定されています。

具体的には、薬局の業務体制や設備について一定の基準(厚生労働省告示)に適合する薬局が、都道府県知事等に届出(H28年10月1日以降)を行うことにより、「健康サポート薬局」である旨の表示ができます。

「一定の基準」ってどんなものなの?

 医薬品医療機器法施行規則第 1 条第 5 項第 10 号に基づいた以下の告知と通知に示されているよ。

    ・告示(平成28年2月12日、厚生労働省告示第 29 号) 

    ・通知(平成28年2月12日 薬生発0212第5号厚生労働省医薬・生活衛生局長)

具体的には通知(薬生発0212第5号)の別紙1に示された「届出書添付書類」がチェックリストになっているのでこれを見るのが良いでしょう。

たとえばすべての薬局ですでに手順書が作成されておりますが(これを省令手順書という)、これに健康サポート薬局手順書を加える必要があります。既存の省令手順書に新しく健康サポート薬局関連の章を立てて加える形でよいみたいです。

そういえば偽造医薬品流通防止に関わる省令の改正や地域支援体制加算に関連した手順書の改訂があったのだけれど2018年中にもうやってあるよね?

別紙2にはどういう一般用医薬品を採用したらよいか薬効群がまとまられてるね。これ見ながら採用する商品を考えるのも楽しいね♪
でも結局、健康サポート薬局って具体的にどんなことするのか、今の説明ではよく分からなかったなあ…

わしは健康サポート薬局の研修を受けたり、届出書類を作成しながら「この薬局で何ができるか?」を考えてワクワクするのがよいと思ってる。甲子園を目指す高校球児だってチーム作りはいろいろじゃろ?甲子園出場に一定のレベルが必要だけれども、そこから打撃を伸ばすか、守備を伸ばすか、走塁を伸ばすかみたいな。健康サポート薬局も「一定の基準」をクリアして、そこから何をするかという自由度はある制度だと思うので、まず多くの薬局が健康サポート薬局の届出をチャレンジしてもらいたいなあと思う。

健康サポート薬局研修の概要

さて今回の本題の研修内容の振り返りについてです。

日本薬剤師会をはじめ複数の団体・企業が実施しています(日本調剤、薬局共創未来人材育成機構、日本薬業研修センター、日本保険薬局協会など)。私は日本薬業研修センターの研修を受講しました。研修は厚生労働省が指定する確認機関日本薬学会の第三者確認委員会より適合しなければならないので、内容は大きく変わることはないと思います。

私が受講した研修は以下の通りです。

   ・技能習得型研修Ⅰ:健康サポート薬局の基本理念(1時間)
   ・技能習得型研修Ⅱ:薬局利用者の状況把握と対応(4時間)
   ・技能習得型研修Ⅲ:地域包括ケアシステムにおける多職種連携(3時間)
   ・知識習得型研修(e-ラーニング):計13講座(22時間)

ちなみに薬局の重要業績評価指数(KPI)の一つに「健康サポート薬局研修を修了した薬剤師を配置しており、当該薬剤師が地域ケア会議などの地域の医療・介護関係の多職種と連携する会議に出席している薬局数」というのがあります。KPIの項目自体を目的化して受講するのは本末転倒ですが、それだけ重要な内容の研修といえるでしょう。

 

以下わたしが受講した研修の内容を振り返っていきます。

技能習得型研修Ⅰ―健康サポート薬局の基本理念―

講義ビデオを観てグループ討議といった内容。グループ討議では「地域住民に健康サポート薬局をどのように認知させるか」「健康サポート薬局として何が求められているか」「現状どこまでできているか、これから何に取り組むか」などを話し合いました。

どのような行政サービスがあるかを把握していないといけないという意見が出ました。

技能習得型研修Ⅱ―薬局利用者の状況把握と対応―

薬局利用者の相談内容から適切な一般医薬品の推奨、受診勧奨、生活上の注意などを行えるようにするという内容。消化管疾患について堀美智子先生の講義とグループ討議を行いました。グループ討議での症例は実は心筋梗塞や大腸がんといった重篤な疾患でした。見逃さずに受診勧奨ができるか、もっと勉強しないといけないと思いました。各論は知識習得型研修(e-ラーニング)でまた学ぶ内容です。

技能習得型研修Ⅲ―地域包括ケアシステムにおける多職種連携―

ビデオと堀美智子先生の講義、グループ討議がありました。薬学的知識と行政サービス等幅広く知っておかなければならないなと思いました。

事前に地域包括支援センターへ見学に行くように宿題が出されていて、これも良い経験になりました。

知識習得型研修① 地域住民の健康維持・増進

健康日本21などを中心に。COPDロコモティブシンドロームなどの啓発。METs、食事バランスガイド、健康づくりのための睡眠指針2014、ストレスチェックなど。

知識習得型研修② 要指導医薬品等概説1

要指導医薬品だけに限らない内容でタイトルが謎であった。市販薬全般の内容であります。解熱鎮痛剤・外用消炎鎮痛剤・胃薬などについて受診勧奨、併用注意など。

知識習得型研修③ 要指導医薬品等概説2

便秘薬・下痢止め・口腔ケア・外用薬など。

知識習得型研修④ 要指導医薬品等概説3

OTC各論。重篤な副作用への注意。医薬品副作用被害救済制度。セルフメディケーション税制とレシート対応など。レシート対応が必要なので調剤薬局でもPOSレジ導入が増えているみたいですね。

知識習得型研修⑤ 健康食品・食品

特別用途食品・保健機能食品・機能性表示食品制度について。これはどこかでしっかりまとめておいた方がよいかも。

知識習得型研修⑥ 禁煙支援

ひそかに禁煙外来と同等の禁煙指導が薬局でもできるのではないかと思っている。

知識習得型研修⑦ 認知症対策

オレンジプランを中心に。

知識習得型研修⑧ 感染対策

手洗い、咳エチケット。代表的な感染症について。代表的な食中毒について。代表的な予防接種について。ノロウイルスへの対応。

知識習得型研修⑨ 衛生用品・介護用品等

 口腔ケア用品、HOT、大人用おむつ、褥瘡(ドレッシング材)。

介護保険を利用した福祉用具のレンタル。服薬支援グッズ(錠剤取り出し自助具、点眼自助具など)、とろみ剤。保険薬局で給付できる特定保健材料。訪問の実際。

知識習得型研修⑩ 薬物乱用防止

薬物依存概説。濫用の恐れのある医薬品。ゲートキーパー養成研修の案内。

知識習得型研修⑪ 公衆衛生

 健康被害を起こす21物質。家庭用品の吸入・誤飲。学校薬剤師。食中毒について。住環境。私が勤務する薬局は農薬も販売しているのでそちらの知識も深めないとなあと思いました。

知識習得型研修⑫ 地域包括ケアシステムにおける先進的な取組事例

地域包括ケアシステムの概要、取組事例について。

知識習得型研修⑬ コミュニケーション力の向上 

 コミュニケーション概論。LQQTSFA。自己効力理論など。

まとめ

 いかがでしたでしょうか?

結局「健康サポート薬局」がどういうものなのかあまりわかりませんでしたね。

「健康サポート薬局」が今後どのような展開を見せるのか、目が離せませんね!

それでは最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

あ、「新垣結衣 彼氏」とかで検索すると出る「いかがでしたかブログ」の構文だ…

ごめん、やってみたかったので…

 健康サポート薬局が今後どのような展開をみせるのか?成功するのかどうかは薬局・薬剤師の取組み次第だと思います。健康サポート薬局の理念を置き去りに、手段が目的化するようであれば失敗に終わりそうな予感もします。

ただし健康サポート薬局届出を目標にして、日々の業務を行い点検することは間違いなくプラスになります。

この研修の内容レベルであっても、すべて理解していたら相当なものですがなかなか難しいかと思います。でも大まかな考え方は必ずつかめますし、どこを調べればいいかも分かるようになりますので、まだ受講されていない方にはおすすめしたい研修でした。

来年(2019)は健康サポート薬局の届出というのが私の目標の一つとなっております。それでは皆様よいお年を~